導入事例

三枚橋病院院長・副理事長 村上 忠 様

MENTAT®が変えた“時間軸”

~10年20年のデータを短時間で未来につなぐ新技術~

三枚橋病院と聞くと、2020年7月に亡くなられた創設者、石川信義先生が院内に作った「ディスコ」を思い出す方も多いと思います。
時を経て、そのディスコだったスペースはデイケア室となりましたが、そこでは「HADO」(ハドウ)というAR(拡張現実:Augmented Reality)を駆使した最新スポーツを患者さんが楽しめるそうです。
そんな斬新で自由な発想が根底に流れる三枚橋病院で、MENTAT®の導入の決め手となったのはどんなことだったのでしょうか?

「これまでしてきた治療経過を踏まえて、これから先の治療を組み立てられることが一番です。

長い治療期間があると断片的にしかその患者さんに関する情報を把握することができず、場合によっては新しい治療に取り組んでいるつもりが、過去にも同じ取り組みがされていて、一度失敗しているにもかかわらずもう一回やってしまっていることも少なからずありました。

それが、今までうまくいきそうだったこととか、全くうまくいかなかったことなど、そういうことがわかった上で、次の治療に踏み出せるっていうのは有益だと思いました。

精神科医療の現場で電子カルテが利用されはじめた当初は、あくまで紙ベースのものが画面に出るようになった程度だったために、ひとつの画面に表示することができるカルテの量は決して多くなく、せいぜい数ヶ月分が精一杯でした。

しかし、MENTATはその時間軸を変えてくれました。

例えば薬をどう使ってきたかを確認することも、必要であれば10年分でも20年分でも圧縮して、しかもグラフィカルに”見える化”してくれるので、今までは把握しきれなかった長年の経過を一画面で見られることは大きなメリットだと感じています。

患者さんは変わらず何十年と同じ病気を患っていても、スタッフは異動があったりするので、関わる人が変わります。そのため多くのスタッフは直近の数年間しか知らない、さらには新たに担当となって、今から過去のデータを遡って患者さんの人となりを知ろうという場合もあるでしょう。

そういったときに、例えば10年分のカルテを全て読み返していたらいつまで経っても治療に取りかかれません。いろいろな職種が、それぞれの関わりの中で、しかも今までその患者さんがたどってきた経過を、かなりダイジェスト化された状態で把握できることは大きいですよね」

近年、精神科医療の中で、過去に蓄積されたデータは見ることも難しく、
また、重点的に見ない傾向があったことを危惧してきた村上院長は、
膨大なデータを短時間で有効に活用するところに魅力を感じたそうです。
また、院長として病院経営を考えた時にもMENTAT®の機能が役立つと考えているそうです。

「精神科の救急医療や急性期医療においては、3ヵ月以内に退院させることが大きな課題であり、診療報酬に大きく影響するポイントです。つまり経営面でいえば、いかに早く退院につなげるかが重要です。

MENTATには、患者さんの入院が長期化するかどうかを予測することができるという機能があり、入院する時点で、これまでの経過を踏まえた上で、この人は注意してかからないと難しいとか、実現するためにはどの職種がより力を発揮しないといけないのか、というポイントが一画面で示されるのです。これは入院時に患者さんに関わるチームが、どこに注意をして、どういうことに重点をおけば早期の退院を達成できるかを把握することに役立っていると思います」

そして、もう一つ。データというエビデンスを重視する村上院長は、
精神科で使用される薬においても存在感を発揮していると語ります。

「同じ治療を受けている人が、どのような治療成績を残せているか?ということを知るためにも、MENTATの役割が大きいです。

例えば、当院の場合、持効性注射剤という服薬の負担を減らす取り組みを行っているのですが、それをすることによって本当に治療成績が変わっているのか?ということに着目したときに、注射を始める前と、注射を始めた後で、その患者さんが入院した回数や日数を調べて、実際、注射を使うと入院が減るということを確認しなければいけません。

これまでは手作業と目視でデータを取得してファイルに落とし込んでいくという手間がかかっていたことですが、MENTATを使うことで、過去の薬歴を調査して、患者さんの過去の情報を抽出した上で解析するということが半自動化できたことはかなり大きいと思います。

過去の治療データによって、この薬は充分量使ったけど効果がなかったとわかっていれば、今後の治療では選択されることは少なくなりますよね。いろいろな薬がある中で使う薬が限られれば、自ずと組み合わせの数も飛躍的に少なくなります。

また、それぞれの薬の力価が違う中で、2種類3種類の薬を使っていると換算をして足し算をする作業が必要になりますが、MENTATを使えば、統一された物差しで自動的にグラフになって表示されます。

こういったデータを把握することで、意識をして薬を減らす動機付けができる、あるいは意図していなかった薬の増加に気づかせてもらえるので、減薬のきっかけに繋がると感じています」

新しい技術を導入して前に進むことは大切なことではありますが、
先人たちが積み重ねてきた知見やデータもまた、未来に向けて活かすべき財産です。
MENTAT®はその活用に貢献できる電子カルテ分析ソリューション。
村上院長が先進的な取り組みを続ける裏側には、多大なる苦労の中でその土台を作ってきた人たちへのリスペクトがあるのです。